大学を出て最初の年、一番最初に勤めた学校が大阪府立枚方高校。比較的、いやかなり自由な校風を持つ高校であった。23歳で、最初の勤務先。この俺にもまあそういう時があった。

にわかには信じがたいが、あれからかれこれ29年が過ぎ去った。非常勤講師という立場だったので、授業を教えるため週に何日か学校に行って授業をするという生活。1年間勤めただけで、生徒のことも今やほとんど憶えていない。

軟式野球部があって、頼まれて監督をした。大阪府の予選でベスト4に進んだ。もう少しで優勝して全国大会に行きそうな勢いであったので、我ながら少しびっくりした。野球が上手い子がたくさんいるのに、指導者がいないというチームだった。いいボールを投げる投手がいたし、遊撃手もよい選手だった。それでも具体的記憶はあまり残っていない。

たとえば、正規の教員に採用されて働きだした2年後の奈良県十津川高校では、当時の生徒のことをかなりはっきり憶えている。もちろん顔や名前も。

残念ながら、枚方高校での記憶は少ない。

これまで何の音沙汰もなかったが、29年経って今夏にある同窓会の連絡が大阪の実家に届いた、ということである。29年前の、ひとりの若造のことを誰かが憶えていてくれたのかと思うと、少々感慨深い。

当時の生徒たちも今では40代の後半になっていることになる。おそらく誰一人、顔も名前もわからないけれど、ちょっとだけ行ってみたい気もする。かなりのチャレンジではあるし、なんだかこわいけれど。